取締役 高野季晴氏 二、白山三業株式会社重役略伝 第六章 白山三業株式会社現況

二、白山三業株式会社重役略伝

取締役 高野季晴氏

現白山三業株式会社取締役高野季晴氏は明治八年一月生、 父は久成氏、 旧幕人である。高野氏は明治四十五年六月二十三日、 小石川指ヶ谷町現三業指定地の許可と同時に白山三業組合の組織成るや前社長秋本鉄五郎氏の頭取の下に同組合副頭取として就任し、 三業株式会社成ると同時に取締役支配人となり、 現在は同社取締役、 営業部員、 庶務会計部長の位地にあり、 同組合の許可に際し、 秋本前社長を抉けて奔走せしより、 今日に到るまで前後二十年当三業株式会社の重役として務めて居る人である。同氏は幼時在神奈川県羽鳥の松岡氏経営の漢学塾、 耕養義塾に於て二ケ年間修学、 夫より福島県、 福島中学校に転じ、 後上京して明治法律学校夜学部に入り、 同部を卒業したる後、 尚三業会社に入る以前は鴻池銀行、 木場銀行、 堀内商店等につとめ、 実業方面に於て活動をして居たのであつた。当会社関係以外に於て指ケ谷南部町会の会計監督を委託せられ、 前後二回、 国勢調査員の任命をうけ、 公共方面に於ても尽力する処があつた。趣味として写真は同氏の特技とも云ふべく、 其の芸術的写真は専門家以外に於て超然たる地歩を占め、 全国写真研究会の展覧会に数回入選の光栄を得て居る程である。現住居は小石川区指ケ谷町一四六番地、 営業は芸妓屋、 屋号は高村家、 数奇を凝らし瀟洒たる同氏住居の前庭は、 小品的な締つたよいものである。