地名『小石川』の起り

第一章 白山附近の事ども

地名『小石川』の起り

小石川の名の起りは、昔し此の辺に小石多き細流ありしより、此の『小石川』と云ふ名称出でたりと伝ふ。廻国雑記及古歌にも、小石川の名も見え、小石川と読めるものもある。小田原北条家の分限帳に、小石川、大川の内と記してあるから、小石川と云ふ地名の用ゐられて居るのも古い事である。更に往古の事を考へて見るに、江戸の入江は此の小石川あたりまで、深くさし入りて、潮の寄せ凍りし事でもあらう。今に網干坂、船繋松等の名の残るも、海辺に近き処にて、細流などの海に注ぎ入る当時の俤を想像せしむるのである。